サウスバウンド
ここんとこ,ちょっとヒマなもんで大量に本が読めて,少し早めの読書の秋を過ごしています。次から次へとちぎっては捨ての速読乱読。ショーモナ本やら,この訳者の日本語言語感覚どうなってますネンと突っ込みたくなるようなパープリン本や(こんな大学教教師に訳させるんだったら儂に仕事クレ),はたまた,オーッこれはすごい,この人の本はもう何冊か図書館で借りてこよーッと,というのやら色々ありました。が,読み終えて感動して,嬉しくなって,何か一言,メモっておきたいと思うのがありましたので,ここに一言。
サウスバウンド 奥田英郎 角川書店
ませガキやら,悪ガキやらの小六児童集団に起きる事件を,一少年の視点から描く第一部もコミカルな筆致,ユーモアなタッチが効いていてそれなりに面白くよめるものの,物語は,第二部に突入してがぜん面白くなる。
反社会的でちょっとイカレ気味の父親に引きずられて,家族で別天地目指し,南方移住というプロットを少年の視点から書くってのは,あのハリソン・フォード主演の代表作&最高傑作(と儂は思っています)である「モスキート・コースト」とうり二つだ(モスキートは原作はケッサクだが,訳本はひどい。映画がお勧めだ)。ただし,これら二つの物語それぞれに漂う雰囲気は全く異なり,サウスバウンドのドタバタ喜劇のコミカル&浪花節的ホロリ感のほうが,モスキートの厭世的デストピア的狂気的真剣度よりも,娯楽小説として読むには楽しめる(そのぶん,当然軽くはあるのだが)。
物語が佳境に入り,
「世の中にはな,最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。奴隷制度や公民権運動がそうだ。平等は心やさしい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り,社会は変わらない」
とか,
「人のものを盗まない,騙さない,嫉妬しない,威張らない,悪に荷担しない,そういうの,全て守ってきたつもり。唯一常識から外れたことがあるとしたら,それは,世間と合わせなかったってことだけでしょう」
とかのセリフは,東映ヤクザ映画の殴り込み前の高倉健や鶴田浩二のそれみたいに格好良くって,泣けてくる。


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